加々美さんが1000万払う、なんて答えを選ぶわけがない。

そんなお金に余裕はないはず。

嘘をついて払うと言ったら、わたしは前金としてある程度のお金を要求して、それが無理なら改めて警察に訴えるという展開に持ち込むつもりだった。

結論は決まっている。

「あと1分ですよ」

加々美さんは唸り声のようなものを上げている。

顔が真っ赤になり、その場で足踏みをしている。

「もう時間ですね。残念でした」

わたしは携帯に数字を打ち込み、発信ボタンを押すそぶりを見せた。

加々美さんが拳を握りしめたとき、わたしはそれでも逃げようとはしなかった。

加々美さんに殴られて壁に頭を打ち付け、床に倒れたときも、受け身を取ろうともしなかった。

床に横たわりながら、わたしは自分の頭からあふれでた血を眺めていた。

意識が朦朧とするなか、その血はやけに鮮やかで、美しかった。