「ねぇ、海斗くん、この部屋にテレビってある?」

「ああ。隅のほうに置いてあるけど」

「どこでもいいから、つけてみて」

「見たい番組とかあるのか?」

「いいから、お願い」

「あ、ああ」

海斗くんの姿が視界から消えた。

顔を満足に動かすことができないので、そのあとを追うことはできない。

海斗くんの声を頻繁に聞いていたからか、不思議と聴力はダメージを受けてはいなかった。

海斗くんの足音やテレビをつける音までわたしは認識することができた。

「な、なんだよこれ」

呆然とする海斗くんの声。

おそらく、テレビには緊急のニュース映像が流れているはず。

「本当、なのか、これ」