授業が終わって、今日はなんだかすぐお家に帰りたい気分だったから、放課後すぐに学校を出た。



――…“それ多分、浮かれてるだけだろ”


怜央くんの正論は、いい意味でわたしを目覚めさせてくれたと思う。

…だって、何もかもその通りだ。千歳くんがうちに来なければ、学校ですれ違うだけの知り合い。

わたしと彼の接点はほぼ無いまま終わっていったはずなのだから。



「ただい……、」



なっちゃんは自称、帰宅部のエースだ。たまに引くぐらい爆速で帰って来たかと思えば、お家でオンラインゲームに勤しんでいる。

だから今日も、家の鍵が開いているのはもちろんなっちゃんが帰って来ているからだと思っていた。



「ま……」

「おかえりなさい、杏花さん」



…玄関に千歳くんの靴しかないなんて、夢にも思っていなかった。