「…千歳くんが、」

「うん」


「……か、かっこいいのが…わるいと思います…っ」



羞恥で震える指先を

彼が絡みとるように掬い取る。


目を合わせられないその果ては、もう降参だと言っているようなもの。



「俺がかっこいいから、その可愛い声が出たんだ?」

「………あんまり、言わないで…っ」

「やーだ。言わなかったら杏花さん、俺のこと意識しねぇもん」

「…へ、」



艶やかで挑戦的な眼差しに

確かな危険が足されていく



「俺、ずっと杏花さんしか見てねぇから」



いつも気品があって、穏やかで、聡明な彼の――…裏の顔。

言葉遣いが崩されて、目の光が消えて、情炎が灯っている。



「これからよろしくお願いしますね、杏花さん?」



…わたしが情炎に捕らえられた、確かな瞬間だった――…。