あの日、千歳くんと総合教室で会って以降

学年も違うから当然と言うべきか、彼を見かけることはほぼ無かった。


毎朝、四天王を目の保養にする女の子たちの後ろで

こっそり視線を向けてみたりもしたけれど、彼ら4人の存在の大きさを実感するだけだった。


楽しみはもちろん、そわそわと、ふわふわと。

…千歳くんが本当に家に住むという実感は未だに持てていない。ただ漠然と同居するんだという事実だけが在り続けていた。



結構な音を響かせながら、掃除機を動かす。

二階は左から、お父さんの書斎、なっちゃんの部屋、わたしの部屋、空き部屋という構図だ。


自分の部屋やなっちゃんの部屋では普通なのに、千歳くんの荷物がある空き部屋に来ると、一度心臓が大きく跳ねる。


(……意識しすぎだよ、わたし…)


…邪念を振り払うべく何度も首を振った。あの日至近距離にあった千歳くんの綺麗な顔も、耳の鼓膜が甘く痺れるような低音だって、



ふたりで…エッチな場面を途中まで聞いちゃったのだって、囚われているのはわたしだけなんだから――…、




「杏花さん」