当たり前です、と言わんばかりに数度うなずくなっちゃん。

なっちゃんの話では事前に千歳くんと話をしていたのだという。…一秒ほど着信があったら緊急事態なので頼む、と。


…いつ!?どのタイミングで携帯触ってた!?

そしてなんでそんなことまで予測して話し合えてるの!?



「ま、待ってよ、わたし高校二年生だよ!?なっちゃんより年上!その状況でも落ち着いていられるよっ」


…思い出したくなくても、思い出してしまう。

先輩たちがその…、いかがわしいことをしようとしたときも、余裕綽々で涼しい笑みを携えていた千歳くん。動揺していたのはわたしだけだった。



「でも良かったね!先輩たちも未遂で。きょーかちゃんの耳に喘ぎ声とか聞こえてたもんならおれマジでぶっ潰しに行くもん」

「………え?」

「チトセが言ってたよ、ヤる寸前で何もなかったしきょーかちゃんも落ち着いてたって。おれはきょーかちゃんなら絶対顔真っ赤にして硬直すると思ってたのにー」



――…“俺と杏花さんだけの、ヒミツだよ?”



…あぁ、もう。

気付いてしまった。


わたしはきっとこれから

いやでも千歳くんのことを意識してしまうのだろう。


彼の艶やかな甘い熱に

誘われたその時間を、はじまりとして――…。