「…気持ちだけ受け取っておく」



――…なっちゃんが箸を置いて言ったのに対し

わたしはご飯を咀嚼しては、淡々と箸を動かし続ける。


そのふたつの動作が交わることは無くて、コップに入った麦茶の氷がカランと寂しげに音を立てた。



「…きょーかちゃん、またそれなの」

「なっちゃんは人気者なんだから。駅に行けば毎日必ず、誰かしら話しかけてくれるでしょう?なっちゃんと話したい子たち、わたしなんかがいたら気を遣っちゃうよ」

「っおれは別に、きょーかちゃんと話しながら行けたらそれでいーもん。学校のヤツらは学校で話すよ」

「わたしだって、なっちゃんとはこうしてお家で話せたら充分だよ?登校まで一緒だったら申し訳ないよ」

「…っ…でもさぁ、」

「ありがとねなっちゃん。ごちそうさまでした!」

「あっねぇきょーかちゃ……、…ったく…」



わたしを引き止めようとしたなっちゃんの手をすり抜け

背を向けて洗面所へ向かい、身だしなみをととのえる。



「…ねー塔子ちゃん。きょーかちゃんってなんであんな、自分なんかーって言っていつも自信ないの。きょーかちゃんの良いとこ、おれ死ぬほど言えるよ」