千歳くんと目が合うたびに、彼は優しく微笑んでくれた。

…分かってる。わたしを安心させようとしてくれているんだ。だからわたしの心臓も暴れ出す必要はなくて、今必要なのはたぶん落ち着くことで――…。



「ねぇ、エッチなことしよ…?」

「当たり前だろ…」



(……え)



「ん、あ…っぁん」

「はっ……ん、」



待って

ねぇほんと、待ってほしい


ここでなんてことしてんのよ…っ!!!



――…舌が絡み合う音とか、キスのリップ音とか

身体と身体が触れ合う音が、いやらしさを伴って響き渡る。



「杏花さん」

「っ、」



千歳くんが耳元で、そっとわたしの名を呼んだ。

正直にビクッと反応してしまった身体に、自身に熱が集まるのが分かって。



「顔、赤いですね?」



――…試すような、意地悪な笑みだった。


図星だ。完っ全に図星。…意識しているのはわたしだけみたいで、千歳くんは涼しい表情でわたしを見ている。


それすら完成された麗しい一枚の画になっていて、そういう時だけ敬語になって

ずるいよ、と表情で悪態をつきながら彼を見ると、またも返って来たのは微笑みだった。



……遊ばれている…っ!!!