「っ!?」



強い力で腕を掴まれて

瞬く間に、男らしく厚い彼の胸板の

目と鼻の先までわたしの顔が近付いた。


…ちょ、ちょっと待ってどういう状況!?



「千歳く…」

「しーっ」

「っ、」


「誰か来る。足音聞こえる?」



――…カツン、カツン。


耳を澄ませると、確かにこちらへ向かってくる足音が聞こえる。

わたしの耳元で艶やかに発せられる低音は、ナチュラルに敬語がはずれる。…そのすべてにドキドキして、いろんな意味で心臓が暴れているみたいだ。


とりあえず必死にうなずくと、彼はこの状況でありながら余裕を含んだまま微笑んでいた。



「こっち」



――…総合教室は、大学の講義室を意識した造りになっている。


長い固定式の机と椅子。スクリーンも搭載されていて、足元は見えない。

窓側のカーテンも大きくて、緩やかな階段を上りながら閉めるそれは、もはやカーテンというより幕だ。



彼に腕を引かれるがまま従うと、連れられたのはカーテンの中で――…。



…って、