「あっ七瀬!あんた今日の小テストしっかりやってきなさいよっ」
「うわ、塔子(とうこ)ちゃん朝から現実突きつけるのやめようよ…。おれが高校に入って追試とか赤点になったこと、一回もないでしょーが」
「それは千歳くんが助けてくれるからでしょうが!」
「…いただきまーす…」
「無視かっ」
まだ眠たいのであろう目を擦りながら下りてきたなっちゃんに
お母さんは仕方ないなぁ、という表情をしながら洗濯物たたみに取り掛かっていた。…ちなみになっちゃんがお母さんのことを塔子ちゃん呼びなのは昔からだ。
いつも見守ってくれるお母さんの表情がきまって優しいことを、わたしとなっちゃんはよく知っている。
「確かになっちゃん、中学のときに比べて成績良くなったよね」
「んー。おれの親友のチトセがね、教え方すっごいの。おれみたいな猿でも分かるように教えてくれんの」
「あははっ!猿って!」
夏休み前と変わらない朝の光景。
お父さんはもうお仕事に行ってしまっているけれど、お母さんが家事をしながら見守ってくれて、わたしたちは楽しく話しながら朝の身支度をして。
本格的に夏休みがあけたんだなぁと実感する。
「ねー、きょーかちゃん」
「ん?」
「たまには一緒に登校しようよ」