お父さんの言う空き部屋。それは完全にあの部屋にあるものをゼロにするということだった。
…何か違うものを置くのか、それとも本当に空き部屋のままにするのか、見当もつかなかった。
「ふぅ疲れたー…」
「お父さんお疲れ様…!」
「ありがとう杏花」
それからすぐ、穏やかで心地良い声色が聞こえてきて
長い息を吐きながら階段を下りてきたお父さんと目が合うと、笑顔を向けてくれたのだった。
「今日はエビフライだったね。塔子のエビフライ大好きなんだよなぁ」
「あ…、揚げただけよっ」
「出た塔子ちゃんのツンデレ」
「……うるさいわよ七瀬…」
「ふはっ!それでこそおれの知ってる塔子ちゃん!」
お父さんは本当に優しくて温厚で、感謝や想いをきちんと言葉にする素敵な人。
お母さんはよく、お父さんからのストレートな嬉しい言葉に恥ずかしそうにしている。それがなんとも可愛くて、わたしは自然と笑顔になるのだ。
なっちゃんもお母さんをからかってはいるけれど、お父さんが関連すると途端にツンデレになるお母さんが可愛くて仕方ないらしい。…気持ち分かるなぁ。
「ゆーやさん、なんで二階片付けてたの?」