わたし、雛森杏花(ひなもりきょうか)、高校二年生。
同じ学校に通うひとつ下の弟・七瀬を起こすという、毎朝恒例行事を実行中だ。
なっちゃんの部屋をノックしてもどうせ返事は無いから、彼が眠るベッドまで向かうのもいつものこと。
「………きょーかちゃん……おは…」
「おはよう。もう7時になるよ?」
「……うぃ…」
「あら今日は素直」
「……おれ……いつも素直だよ…」
「ふふっ、下でご飯食べてるね」
先週、夏休みが終わった。まだ残暑の厳しい日々が続いている。
なっちゃんは寒い時期になると超クセモノで、意地でも毛布をかぶって丸まり動かないんだけど、もうしばらくは大丈夫そうだ。
…お母さんもさっきは手厳しいこと言っていたけれど、何だかんだで彼を皆勤賞に導いたりするのだから、愛に溢れているなといつも思う。
「いただきまーす!」
今日は、どんな一日になるかな。