稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 そして、エミリーと話をすればするほど、お願いしなくて良かったと思ったこと。
 ……婚約者のふりをしてほしい……と。
 それはつまり、私の前でも他の人がいるときは男のふりをしてくれということだもの。
 私といるときだけは男のふりをしなくてもいいんだよって、今はそういう気持ちでいっぱいだ。
 お願いしなくて良かったと思っている。

 よかったけれど、よく考えたら婚約者候補探しはどうしよう。結局、エミリーと会って話をするのが楽しすぎて今日もディック様以外の人のアレルギーチェックは全然していない。……次回はもう少し頑張ろうかな。
「舞踏会も辛いのなら……」
 こんなに、私のことを心配してくださるお父様のためにも……。
「舞踏会は辛くはありません。その、お友達も出来たので」
「友達?誰だい?お茶会を催して招待するか?うん、そうだ、それがいい。王都で話題のお菓子屋からお菓子を取り寄せ……いや、お菓子屋の職人を招いてうちの調理場で作ってもらった方がいいか……ああ、それには飛び切りの材料を準備して」
 お父様の目が輝いた。
 うちに招待……。
「無理よ、招待はできないわ」
 エミリーと我が家のリビングで庭を眺めながらお茶をする姿や、噴水の見えるあづまやでキラキラ光る水しぶきを見ながらお菓子を食べる姿を想像して首を振る。
 いくら心が女性でも、体は男性だ。
 二人で仲良くお茶を飲む姿はどう見ても、婚約者同志だ。
 婚約者でもない男女が二人でお茶なんて……。いらぬ噂を建てられる未来しか見えない。エミリーに私といるときまで男性のふりはさせたくない。絶対だめだ。
「何故だ?母親が、女主人はいないが、お茶会くらいなら侍女頭のロッテンがいれば完璧なものを準備できるぞ?もしそれでも不安ならば……」
 ああ、またお父様に心配をかけてしまう。お母様がいないことをお父様は気にしている。