稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「くすくす、もうリリーったら、本当にくいしん坊さんなのねぇ。慌てなくてもサンドイッチは逃げてかないわよ?ううん、違うわね。そんなにお腹が空くまで何も持ってきてあげなくてごめんなさい。今度は初めから何かお茶と焼き菓子でも用意しましょうか」
 エミリーがニコニコと笑っている。
 よかった。呆れられてない。
 それどころか、今度だって。次の話をしてくれる。よかった。
 ほっとして胸をなでおろす。

 ……って、本当に、些細なことでも嫌われたらどうしようってすごく不安になっちゃう。
 エミリーに嫌われたくない。
「ああ、でも、馬鹿な子ほど可愛いなんて言葉、理解できなかったけれど……慌てて食べてむせちゃうなんて、馬鹿なことなのに、逆にとっても可愛いんだもの。ビックリしちゃったわ」
「ええええ、エミリー変よ。むせてる姿なんてその、可愛くないよ……?」
「そんなことないわよ~。すました顔でお上品にお食べあそばすよりも、パクパクとおいしそうに食べて、慌てすぎてむせちゃうほうが、何百倍もかわいいっ!」
 そう、なのかな?
「それとも……」
 エミリーがふと言葉を止めて私の顔を見た。
「リリーだから、何でも可愛く見えるのかしら?」
 エミリーの言葉にすぐに言い返す。
「違うわよ、きっとエミリーだからよ。エミリーは可愛いを見つける天才だから、他の人が見ると可愛いと思うよりおいしそうと思うものも可愛く見えちゃうんだもの。何でもきっと、可愛いって思えるエミリーだからよ。きっと、他のご令嬢にはみっともないって思われるわ」
 ふぅっと小さくため息を漏らす。
「だから、私がむせたことは内緒よ?」
「ふふ、また、私たちの秘密が増えるのね。もちろんだまっていてあげるわ。くすくす」
 エミリーがティーポットからお茶をカップに注いだ。その仕草は優雅な女性そのものだ。