稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 私の言葉にエミリーは賛同してくれない。
 いいアイデアだと思ったのになぁ。
「……怖いわね。まさに、女の執念がこもった呪われそうなぬいぐるみね……」
 ……そうかな?
「浮気を疑われるような男は、たくさんのぬいぐるみに囲まれることになるって考えると……ぬいぐるみの可愛さが吹っ飛んじゃうわっ!浮気しないでね、私のこと忘れないでね、私だとおもって大切にしてね……浮気したら承知しないわよ、私の髪をぬいぐるみに入れてあるわ、浮気できないように呪いをしてもらったのよ……まで、想像しちゃったわ……」
 エイミーがぶるぶると震えた。
「髪の毛……呪い……夜中にぬいぐるみに首を絞められそうっ!」
「きゃー、なんてこと言うの、リリー!怖くてぬいぐるみを夜中に見れないでしょっ!」
「大丈夫よ、エイミーはぬいぐるみを持ってないでしょ!」
「あら、そうだったわ!」
「ぷっ」
「ふふふふふ」
 二人で声を立てて笑った。

 そうして、色々な話をしているとあっという間に時間が過ぎて行く。
「ああ、そうだわ、お腹が空かない?」
 エイミーの言葉にどきりとする。
 少し前から、空腹感を感じていたのだ。
 ……それは、時間の経過を意味する。……どれくらいの時間が経ったのか考えたくなくて、空腹にも気が付かないふりをしていた。
 もう、こんな時間だとエミリーに言われたくない。
 でも。引き留めるわけにもいかない。
「そうね、お腹が空いたわ」
 素直に答える。
 じゃぁ今日はこの辺で。会場に戻って何か食べましょう、もしくはもう迎えの馬車が……と、色々な言葉が返ってくるのを覚悟する。
「ふふ、よかった」
 よかった?
「少し待っていてくれる?ほんの少しよ、すぐに戻ってくるわ!」
 エイミーは楽しそうに立ち上がって、仕草をエミリオに戻してからあづまやの奥へと進んでいく。
 訓練された人の歩き方だ。