稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 急に男だなんて言われて、距離を置かれてしまったようで悲しくなって、エミリーは女だと強調する。
「ん?あら?ええ、そうね、私は、男に見えるだけの女ね?あら?でも……恥ずかしいのよっ。リリーも、女性の胸に顔をうずめることを想像してみたらいいわ!」
 言われるままに、想像する。
 思い浮かんだのはローレル様だ。
 ローレル様のあの豊かな胸に顔を埋もれさせ……。
 柔らかな胸、そしてきっといい香りのする胸に……。
 顔が赤くなる。
「そ、そうね、確かにエミリーの言う通りだわ!女同士でもちょっと恥ずかしいわね」
 熱くなった頬を冷ますように、手であおいで風を送る。
「そんなに恥ずかしがって……誰なの?いったい、誰に抱きしめられた想像をしたの?」
 エミリーの言葉が終わる前に、気が付けば今度は私の頭が、エミリーの胸に抱え込まれていた。
 想像したローレル様のように柔らかな胸ではないけれど……。
 エミリーの匂いが鼻をくすぐる。
 香水じゃない、服に丁寧に焚き染めた香木の香りだ。香水よりも高価な……何という名前だっただろうか……。
 いい香り……。

 思わず香りにうっとりとすると、エミリーが私の頭を、髪を乱さないようにそっと撫でた。
「……ぬいぐるみを抱きしめるのはどんな気持ちかしら……。リリーをこうして胸に抱いているのとはきっと違うわよね……。抱きしめて眠るのは、どんな感じかしら……」
 エミリーの声が頭に響いてくる。
「……そうだわ」
 いいことを思いついて、思わず出た弾んだ声にエミリーが私の体を離した。
「ねぇ、エミリー、男の人がぬいぐるみを持つ流行を作り出せば、エミリーも持つことができるようになるわよ!」
「え?そんな流行なんて作れるかしら?」
「例えば、ぬいぐるみに婚約者や妻と同じドレスを着せ同じ香水をつけるの。それを男性に送ると浮気防止になるとか」