稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 柔らかいと言う言葉には、男の体の自分とは違うというショックを受けてのことかもと思ったけれど、慰めの言葉も何も口にしない。何でもないことのように、返事をする。
 エミリーの指が、私の頬を撫で、そして唇にふれた。
「さくらんぼのような唇も……とても柔らかいのね……」
「唇は、エミリーも柔らかいでしょう?」
 頬なら多少男女で柔らかさの違いはありそうだけど、唇なんて変わらないんじゃない?
「確かめてみて」
 エミリーが妖艶ともいえる笑みを浮かべた。
 びくりと思わず驚いてしまう。
 髪を触るのとは違うよ。
 エミリーの唇に触れるなんて……。
 エミリーが、私の唇に当てていた手を離すと、私の手をつかんだ。
 髪を触っていた私の手をそっと頭からおろしてから、エミリーの顔がぐっと私の顔に近づく。
「どうだった?柔らかかった?」
 すぐ目の前に、エミリーの可愛い笑顔を浮かべたカッコイイ顔。ああ、そう、そうなの。顔はエミリオ……男の子だもん。かっこいいんだよ。仕草とか言葉とか、そういうのは飛び切り可愛いのに。顔はイケメンとか……。
 ずるいよ。
 もうっ。
「エミリー、ビックリするっから、その……」
「ねぇ、柔らかかった?」
 思わず真っ赤になってうつむく。
 まさか、唇で唇の柔らかさを確かめてなんて……。
 き、キスしてくるなんて!
「や、柔らかかったよ、エミリーの唇もっ!」
 エミリーから逃げるように体半分、横に動く。
 すると、エミリーは驚いたように私から距離を取った。
「ご、ごめんなさい、あ、あの……」
 急に今までとは違う慌てた様子を見せる。
「わ、私ったら、なんだか、その、えっと、キスするつもりとか無くて、えっと、ああ、あまりにリリーがかわいくて、気が付いたら……その」
 んー。
 かわいいものを生活から排除されているエイミーだった。