稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 遠慮じゃなーい。
 本当に、まずい。どうしよう。名を明かせばいい?お兄様に助けを求めようか。
「ディック様、その方なら大丈夫ですわよ。そうして仮病を使って男性の目を引きたいだけでしょうから」
 え?
「そうなのかい?とても仮病には見えないが……」
「あら、ディック様は、私の言葉が嘘だと?酷いですわ……」
 ああ、もう、くらくらして行きも苦しくなってきた。
 ディック様に話しかけているこの声には聞き覚えがある。
 エカテリーゼ様だろう。
 吐きそうになってきて顔を上げることができない。
「ほら、見てくださいませ。顔を上げて否定することもできないようですわよ?」
「仮病を使ってお優しいディック様の気を引こうなんてなんてあさましいのかしら」
「この間ピンクのヒラヒラを来ていた恥知らずですわよね」
「あの手この手でよくもまぁ……」
 周りの人たちがエカテリーゼ様の言葉に同調して色々噂を始める。
 ディック様が、エカテリーゼ様の話が本当なのだろうかと思い始めたのか、私の手を握る力が弱った。
 そのすきに、手を抜き出すと、貴族令嬢としてはとてもみっともないのだけれど、小走りで会場を抜け、窓から庭に飛び出した。
 吐く、全身にぶつぶつ出る、やばい。
「すー、はー、すー、はー」
 息が、苦しくはならなかったことに感謝。
 そして、結果としてエカテリーゼ様に助けてもらった形になる。
 あれ?お兄様はどこにいたのだろう。お手洗いにでも行ったのかしら?
 まぁいいか。結果的に、私は無事。
 全身を羽虫が止まったような気持ち悪さも収まって来た。
「エミリー……」
 もう、来てるかな。
 まだ薔薇の咲いていない薔薇の迷路を潜り抜ける。噴水の場所まで来て、愕然とする。
 その先、あづまやへと続くはずの道が薔薇の垣根でふさがっているのだ。
「え?どうして?何故ふさがれちゃったの……?」