稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「ああ、あの子、先月ピンクのドレスで浮いてた子だよ。今日はずいぶん見違えるドレスを着ていたな」
「え?本当か?先月のアレから考えるとうちでも釣り合いが取れないこともないな」
「何言ってんだよ、お前、伯爵家を継ぐんだろ?伯爵令嬢でお前狙いの子いくらでもいるじゃないか。俺、いってみようかな。玉の輿狙ってなきゃ、俺にもワンチャン」
 ん?私の噂?
「見ました?この間のピンクの……今、わざと気を引こうとくしゃみしていたわよ」
「いやぁね。くしゃみなんて下品な手段を使うなんて」
 私の噂……よね。くしゃみはわざとじゃないんです……。
 そうか、くしゃみは下品……なるべく我慢しなければ。
「くしゅんっ、くしゅんっ、くしゅんっ」
 言ってるそばからくしゃみが止まらない。かなりアレルギーが強く出る人が近くにいるようです。
「大丈夫かい?気分が悪いのであれば、休んだ方がいいよ」
 さっと、大きな白い手がエスコートをしますよとばかりに差し出された。
「きゃー、ディック様よっ!」
「なんで、ディック様が、あんな女に!」
 ん?ディック様?名前はきいたこと……くしゅんっ。
 ああ、そう、確かお兄様のお友達で、侯爵令息だったはず。

 差し出された手を無視するわけにはいかないようだ。手を伸ばして手袋越しにちょこっとふれたとたん。
 ぶわっと、羽虫が全身に止まったような気持ち悪さ。
「くしゅんっ、くしゅんっ」
 ああ、これ、やばいやつ。
「無理することはないよ、少し休むといい。ロイホール公爵夫人に部屋を用意してもらおう。休んでいる間に馬車を呼んであげるから」
 親切な人だ。
 お兄様も、いいやつだとほめていただけのことはある。
 だけど、私的には、ダメな人だ。やばい人だ。この人と長時間いたら命の危険が。
「あの、大丈夫ですから……手を、離してくださ……くしゅっ」
「遠慮することはない」