稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 うちに出入りしている仕立屋の顧客って、上流貴族……王家にも出入りするくらいのすごいところだけど、それでバレたりしないだろうか。
 顧客の幅、広かったんだっけ。
 ……って、待って。そもそも、1着のドレスでコサージュを付け替えることで着まわせるようになんて発想、上流貴族だけを相手にしていれば、鼻で笑っておしまいになるんじゃない?
 学園で告白イベントを流行らせたいとも言っていましたし、そもそもがデザイナーは男爵令嬢で、そのつながりや学園時代からのお友達にも話している可能性はありますよね?
 私が色々と考えを巡らせて黙っていると、ローレル様が扇で口元を隠して、二人にささやいた。
「アンナ、ハンナ、二人ともその前に言うことがあるでしょう?」
 二人の名前は、アンナ様とハンナ様とおっしゃるのね。
 似た名前だけれど、やはり姉妹なのかな。
 ローレル様にささやかれて、二人がびくっと体を揺らしてから、お互いの顔を見合わせた。
「あ、あの……」
 どちらがアンナ様で、どちらがハンナ様か分からないけれど、年上の見える前髪を上げた方のご令嬢がおずおずと口を開いた。
「この間のことなのですが」
 この間というのは、先月あった舞踏会のことだよね。それ以外で会ったことはないのだから。
「し、失礼なことを言ってしまって……」
 どうやら、ちょっとずつアンナ様とハンナ様が言葉を口語に口にする。すでに二人の間、いいえ、ローレル様も含めて言うべきことは打ち合わせしてあったのかもしれない。今日、私が来るか来ないかもわからないのに?
「「申し訳ありませんでした」」
 二人が声を合わせて頭を下げた。
 失礼なこと?
 ああ、面と向かってドレスがダサいみたいなことを確かに言われたわね。