稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 右手にピンク、左手にレース。
 右手を上げて、左手を上げてと繰り返す。
「ああ、決められないっ!」
 そうだわ!
 いいことを考えた!
 ピンクのコサージュに、レースで縁取り編みしたリボンをつければ、どっちん要素も含んでよりかわいくなるんじゃないかしら?
 レースの縁取り編み、結構得意よ。かわいいから好きだし。
 早速、作業をするために裁縫道具を取り出す。リボンの両脇に白い糸で縁取りをするための縫い目を作る。
 そこにかぎ針をさしてレース糸を通しながら編んでいく。。
 ふと、思いついて、リボンの結び目になる見えないところにイニシャルを刺繍することにした。
 エミリーのEを。
 ……。いや、この場合は、エミリオのEかな?男性用グッズだし。
 ……とはいえ、そもそも、エミリーはエミリオなんだろうか?本当の名前?
 私が公爵令嬢として名乗らなかったように。あの場にいれば、当然貴族で、家名もあるはず。
 だけれど、私たちは、家名も名乗らず、私は愛称のリリーだけを口にした。
 エミリオも、本当の名前は違うかもしれない。

 とはいえ、エミリオ―ルとか、エミリオロスとか、イニシャルがEはきっと同じよね?
 何色で刺繍しようかな。ふと、エミリーの瞳の色が浮かんだ。よし。瞳の色と同じ色で刺繍しよう。
 もし、エミリーいや、エミリオが違う名前でイニシャルがEじゃなかったとしても、瞳の色まで違うことはないんだから。
 ふんふんふふーんと、鼻歌交じりに刺繍とレース編みを続ける。
 この、少しずつ出来上がっていって、出来上がっていく部分が次第に増えて行く、ああ、なんだろう。すごくこう、この楽しみをなんと表現すればいのか。
 
 待ちに待った、舞踏会の日が来た。
「じゃぁ、リリー、無理しないように」
 今日は2台の馬車でお兄様とは別に公爵邸を出発する。公爵令嬢だとなるべくバレない計画だ。