稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「婚約者同志やご夫婦で、対になるブーケ・ド・コサージュを身に着けるなんて、本当に素敵ですわね!」
 なるほど。そういう理由であれば、男性が女性っぽい花の飾りを身に着けていたとしても不思議ではない。
 これは、エミリーが持っていても怪しまれないのでは?いや、まって!婚約者がいないのに持っていたら逆に怪しい。
 えーっと、何か他に、エミリーが持っていても怪しまれない理由が必要。
 そうだ!
「婚約者同志が身に着けるということがあるなら、それにあこがれるパートナーがいない人も出てきますよね?でしたら、女性から男性へと贈るのはどうでしょうか。告白の意味を込めて」
 貴族の間でも、家の格が釣り合えばそれなりに自由に恋愛することもある。親が幼い時に婚約者を決めてしまうことばかりではない。
 というか、家を継ぐとかどこかの家とつながりを持ちたいとかそういうことがない者は恋愛結婚も多い。次男三男以下や、子爵令嬢や男爵令嬢は、舞踏会や学園で相手を見つけて来い!と親が言って送り出すこともあるくらいだ。
「リリーシャンヌ様、なんてロマンチックなのでしょう。ああ、学園で卒業パーティーに私と踊ってくださいと自分とついになるブーケ・ド・コサージュを贈るのですね。胸元に男性がつけてくれるかどうか、ドキドキしながら当日を待つ。本当に、素敵」
 デザイナーがうっとりと目を閉じる。学園時代を思い出しているのだろうか。
 ちなみに、彼女は男爵令嬢だ。貴族の女性の働く場として多いのは上位貴族の侍女や王宮での侍女だ。しかし才能を生かして、貴族との取引のある商家で働くこともある。舞踏会の流行を押さえるにも、実際に出入りできる立場である貴族の方が有利であり、彼女の働く仕立屋は国の中でもトップに君臨し続けている。