だけれど、その口から出たのは否定の言葉だった。
「だが、修道院だけはダメだ。あそこは、男子禁制……。一度入ってしまえば、親兄弟とはいえ、会うこともできなくなってしまう。私は、リリーと会えなくなるのは耐えられない」
 フルフルと頭を横に振るお父様。
「お父様……」
「たとえ、この手に抱きしめられなくとも、思うように頭をなでてやれなくとも、顔を見て話をでいるだけでも幸せなんだよ」
「お父様、私だってそうです。ですが……」
 お父様がふぅと小さく息を吐きだした。
「結婚しなさい」
 は?何と言いました?
「ちょうど、明日は大規模な舞踏会が開かれる。国内の独身男女の出会いの場としての色合いの強い舞踏会だ」
「お、お父様、あの、私、アレルギーが……結婚なんて……」
 お父様の目にはノーとは言わせない強い光が浮かんだ。
「私もそう思っていた。リリーに結婚は無理だろうと。だが、相手によってアレルギーの出方に違いがある。ということは、もしかしたらこの世に一人くらい、リリーのアレルギーが出ない相手がいるかもしれない。探してきなさい」
 そんな……。
 男の人がたくさんいる舞踏会に行けと……?
「公爵令嬢の結婚相手ともなれば、家や立場色々なしがらみがあり自由に選べないと……私も思っていた。だが、修道院に行くくらいなら、どんな相手でもかまわない。世継ぎを必要としない男と形ばかりの結婚でもかまわない。愛人でもなんでも相手にあてがえばいいんだ。な?」
 ……。
 いわゆる、白い結婚というやつをしろと……。
 まぁ、確かに、一緒にいるだけではアレルギーは出ない相手もいます。
 お父様やお兄様がそうです。触らなければいいんですから。
 でも、そんなの……。公爵令嬢ともなれば、公の場に、エスコートされて出なければならないことも……。