稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 いや、別に殿下をそもそも喜ばせようとはしていないけれど。
 オレンジ色は殿下の好きな色なのかしら?だから、みんなオレンジ色?
「よほどみっともない体型なのかしら?こんなにたくさんのフリルで胸を隠すなんて」
 姉妹の一人が自身の胸をどんっと突き出すようにした。
 胸のボリュームもすごいけれど、腕のボリュームもなかなかのもので、手袋が若干食い込んでいる。
「おやめなさい。そんなふうに人を笑いものにするものではなくてよ?」
 背の高いご令嬢が姉妹の二人に声をかけた。
「ローレッタ様……」
 二人が口を閉じて罰が悪そうにローレッタ様と呼ぶ女性の後ろまで下がった。
 ローレッタ様が、私のすぐ前まで歩いてきて、手荷物扇で私の顎をくいっと上に向かせた。
「せっかく、可愛らしい顔をしているのに、もったいないわよ?何か事情があって、そんなドレスしか持っていないのなら、相談に乗ってあげるわ」
 え?
 もったいない?
 相談に乗る?
「いえ、あの、このドレスはお母様の……」
 想い出が詰まっていてと説明しようと口を開くもその途中でローレッタ様の言葉でさえぎられた。
「まぁ、お母様の趣味なの?それならば仕方がないわね……。私も、本当はこんなオレンジ色なんて着たくはないのよ。できれば濃くて深い青色のドレスが着たいのよ」
 深い青色をきているローレル様の姿を想像する。
 鮮やかな赤毛に、深い青。とても映えそうだ。背の高いローレル様が身に着けると、かっこいいだろう。
「お似合いになると思いますわ」
 正直な感想を述べると、ローレル様の顔がぱっと輝いた。

「そうでしょう?それなのに、お母様が仕立て屋の言葉に……殿下のハートを射止めるにはオレンジのドレスを着るべきですと言われて……」
 はぁとローレル様がため息をついた。
「あの、好きなドレスを着ちゃだめなのですか?」