稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 そういえば殿下のための出会いの場がこの舞踏会の裏の目的だとお兄様が言っていた。
 それなのに、殿下は女性たちの前に姿を現していないの?
 殿下ってどのような方なのだろう。探しているというけれど見たら分かるものなの?みんな顔を知っているの?それとも服装が特徴的とか?
 まったく興味がないし、会いたいと言えば、お見合いの席が設けられるだろう立場なので、むしろ家で話題にすることはないからサッパリ分からない。
 公爵令嬢であり、年齢的にも釣り合いの取れる数少ない令嬢のうちの一人なんだけど、そう言えば、王家の方からもお見合いもどきがセッティングされたことはない。お父様が上手に断ってくださっているのか、それとも殿下側が何らかの事情で会うのを避けているのか。
 まぁなんにしろ、ありがたい話だよね。もし、男性アレルギーが強く出るような相手だったら、手を取りダンスを始めた途端に吐くとか、令嬢にあるまじき失態をおかしかねないもの。

「ねぇ、ところであなた、見ない顔ね、どうしてこんなところにいらっしゃるの?」
 少しふっくらとした赤毛のご令嬢が口を開いた。
「くすくす、やめてあげなさいよ、この子でしょ?とんでもなくみっともないドレスを着た子って」
 ふっくらした赤毛のご令嬢とよく似た顔の子が笑う。姉妹かしら?とても似ているわ。
 ドレスの色が同じなので、より似て見える。
「ああ、恥ずかしくて人に見つからないようにここに隠れてたってことね」
「まぁ、オレンジ色にしなかったことだけは褒めてあげてもいいわね」
 ん?
 オレンジ色にしなかったから褒める?むしろ、流行の色を取り入れないからダメって言わないの?
「そうね。もし、こんなだっさいデザインの子供っぽいドレスなのに、オレンジ色だったりしたら、殿下ががっかりするでしょうし」
 殿下ががっかり?