稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「あ……えへへ。ごめん。うん、いいの。気にしないで、分かってる。心は女っていっても、体は男だって……。ビックリさせちゃってごめんね……貴族の独身男女が一緒に風呂に入れるわけないのにね。えへへ、言ってみただけだから」
 エミリーに謝らせてしまった。
「う、ううん、誰かと一緒にお風呂に入るってことが無いから……。友達とも、家族とも……」
 エミリーが、ハッとして可愛らしく笑った。
「そういえばそうよね。私も、家族とだって一緒に入らなかったわ。従者に体を洗われることはあっても、基本的には一人ね。寮生活とか集団生活をしない限り誰かと一緒にお風呂に入ることなんてないのね……友達同士でも、入らないわね、確かに……」
 エミリーの言葉にからかうように言葉を続けた。
「ふふ、むしろ、男女で入るのが普通なのかも」
「やっだぁ、もう、リリーったら。おませさんよ、おませさんっ」
 顔を赤くしたエミリーが小さな子がいやいやとするように首を横に振る。
「あー、でも、レースがたぷりあしらわれた天蓋に、薔薇のお風呂……あこがれるわ……」
「ねぇ、薔薇風呂なら花の香りを楽しみたいとか言って用意してみたら?
 ふぅとエミリーがため息をついた。

「両親は警戒しちゃって、少しでも女の子っぽいことは絶対させてくれないから……あーあ。かわいい部屋に住みたい」
「あーあ、男の人がいない家に住みたい」
 私も、エミリーを真似してつぶやいてみた。
「ふふふ」
 エミリーから笑いが漏れた。
「ふふふふふ」
 私も思わず笑ってしまった。
 こうして、秘密を共有できる友達がいるなんて。隠しごとせずに本心で話せるお友達ができるなんて。
 ざわざわと人の話し声が近づいてくるのが耳に届いた。
 私もエミリーもすぐに口を閉じた。
「また、会いたいわ」
 エミリーの言葉に頷く。