稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「嫌なわけない、本当に嬉しい。あの、エミリーこそ、嫌じゃない?流行には疎いし、その、女友達との付き合いかたもよく知らないような私なんかで……」
 エミリーが首を大きく横に振った。
「何馬鹿なことを言っているの?むしろ、リリーだから友達になりたいの。私の理想の女の子なんだもの。それに、流行は私が教えてあげるわ!自分では着られないけれど、ドレスは大好きだもの!女友達との付き合い方は私もしらないし……他の人がどうしてるのか分からないけれど、私たちは私たちで楽しめればそれでいわよ」
 そうね。うん、そうだわ。
「きっと、私もリリーも、他の人がいるとこんなふうにしゃべれないだろうし……」
 そう言われればそうね。
「その、エミリーのことを知っているのは、どれだけいるの?」
「一人。姉だけが理解者だったわ。姉はね、スカートが嫌いでズボンが履きたい、刺繍よりも剣が習いたいって人だったの。それで、私のこともよく理解してくれて」
 一人だけなんだ。ていうか、理解者だった?過去形?
「姉と二人だけの時だけは、本当の私になれたのよ。姉が10年前に他国へ嫁いでからは……誰も私を理解してくれる人はいなかったわ」
「誰も?ご両親も?」
 エミリーが複雑そうな表情を浮かべた。
「むしろ、少しでも女性っぽい仕草を見せると、男らしくしなさいと、恥ずかしいと、叱られたわ。そして、決して誰の前でも女みたいな仕草や言葉を見せるなと命じられたの」
 よく見ると、ちょっと悲しそうな顔にも見える。

 ……そうだよね。唯一の理解者のお姉さんは他国へと嫁いでしまい、両親ですら理解してくれないなんて。
 それに比べたら、私は父も兄も私のアレルギーを理解してくれている。
 父だって……本当はもっと無理にでも結婚させることだってできるのに、私のことを思って「平民でも構わない」とまで言ってくれた。
 あ……。