稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「エミリーは可愛いって言ってくれたでしょ?それがとても嬉しくて……」
「あら、だって、本当にかわいいんですもの。私、ピンクが一番好き。それに、フリルもレースも大好きなの」
 ニコニコと嬉しそうなエミリーの顔を見るとこちらまで幸せな気持ちになる。
「私も。子供っぽいとか言われるみたいだけれど、ピンクは好き。黒とか赤とか紫とかちょっと怖いのよね」
「あー、分かるわ!黒は悪魔みたいだし、赤は血みたいだし、紫は……んー、そうね、毒虫みたいだもの!」
 エミリーの言葉にうんうんと大きく頷く。
 このんで赤や紫のドレスを着ているご婦人もいるため、今までは誰にも言ったことはなかった。
 私の怖い感情に共感してくれる人がいるなんて!
「オレンジは嫌いじゃないけれど、右を見ても左を見てもオレンジのドレスばかりだと流石に見ていても楽しくないわよね。それに、ちょっと他の色と合わせにくいと思わない?」
 エミリーの言葉に、そういえばオレンジ色のドレスが多かったことを思い出す。
「私、男性アレルギーがあって、舞踏会には顔を出すのは実は何年も前に出た舞踏会以来、2度目で……恥ずかしながら全然流行とか知らないんだけれど、オレンジは流行っているの?」
 私が首をかしげると、エミリーが口をあんぐりとあけた。
「本当に知らないの?理由も、あー、私のことを見ても分からなかっただけじゃなくて、何も知らないの?」
「母も亡くなっているので、流行には本当に疎くて……いえ、男性アレルギーがある限り、舞踏会でダンスを踊ることもないだろうと、あまりドレスに興味がなかったというのが正しいかな」
 エミリーがちょっと悲しそうな表情をする。
「お母様がいらっしゃらないのね……舞踏会に出る出ないは別として、こんなにリリーはかわいいのに、似合うドレスを選んでくれる人もいなかったのね……」
 エミリーの手が私の頬に触れた。