稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「ああ、もしかして、私に、男性ですかって尋ねたのって……」
「ええ、エミリーに触れられても、全然アレルギーが出なかったの。それで、男装の麗人なのかなと思って」
 私の言葉に、エミリーが笑った。
「そっか、男装の麗人……私、少しは女に見えたのかしら?」
「ええ、もちろん。仕草がとても上品だもの」
 素直に答えると、エミリーが両手でほっぺをはさんで顔をフリフリと可愛らしく振り出した。
「嬉しい。そんなこと言われたのはじめてよ。いつも、男らしくしなさい、男らしくない、男というのはって言われ続けてきて……こうして、本当の自分で話ができる日が来るなんて、信じられないわ!」
 あ。そうだ……。
「あのね、エミリー……出会ってすぐ、こんなことをお願いするのは……その、図々しいと思うんだけど」
「なあに、リリー、私たちお友達でしょ?何でも言ってちょうだい」
 エミリーが私の手を取ってきゅっと握った。
 エミリーは心が女性で、私のアレルギーもでないから、本当に女性なんだろうけれど……。それでも握った手の大きさや、剣ダコの固さが、男の人のそれで、ちょっとドキッとしてしまう。
 いけない。友達にドキドキするなんておかしな子だと、内心一人で焦っていると、ぱっとエミリーが手を離した。
「ご、ごめんなさい、私ったら。出会ってすぐなのに、私の方こそ友達だなんて図々しかったわよね?」
 今度は私がエミリーの手を取って大きく首を横に振る。
「ううん、違うの。私、嬉しかったの。あの、このドレスも……他の人達には子供っぽいとかダサいとかみっともないとか言われてしまったんだけど……」
 お母様とドレスを選んでいた時の想い出。そして、お父様やお兄様が私のために必死に考えてくれた気持ち。
 その全部をけなされたようで……本当はとても悲しかった。