稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 身長は180センチ近くあるし、肩幅も広くて、女性の体型ではないんだけれど、それでも仕草と中世的な美しい顔立ちで女性に見えてくるから不思議だ。
「私はリリーよ。エミリー、よろしく」
 エミリオと名乗られたけれど、エミリーと女性の名前で呼んでみた。
 すると、エミリオは、嬉しそうにはにかんだ笑顔を見せる。
「リリー、私のこと、エミリーって呼んでくれるの?あの、気持ち悪くない?男なのに、心が女とか言い出して、こんなしゃべり方して……」
 首を横に振る。
「ちょっと驚いたけれど、気持ち悪いなんて思わないわ。むしろ……心が女だというエミリーだから、こうしてお話ができるんだし」
「え?どういうこと?」
 私は、手袋を外したままになっていた左手をエミリオ……いいえ、エミリーの前に差し出して見せた。
 捕まれた手首付近が真っ赤になって腫れあがっている。
「まぁ、どうしたの?大丈夫?」
 エミリーが焦って立ち上がった。
「あのね、私……男性アレルギーなの」
 今まで公爵令嬢として家族と、家に仕える数人の信用できる者たち意外には明かしていない秘密をエミリーに伝えた。
「男性といるだけで、くしゃみや鼻水が出たり、触れられると、発疹が出たり、こうして赤くなって炎症したり……時には気持ち悪くなって熱が出て寝込んでしまうことも……」
 エミリーがまぁと言って、口を押えた。

「かわいそうに……食べ物でアレルギーを起こしてしまう人がいると聞いたことはあるけれど、男性でアレルギーが出てしまうの?それは大変なんじゃない?」
 エミリーの言葉に曖昧に笑って返す。
 結婚したいと思わなければ、女修道院で女性だけに囲まれて生活できれば、それほど大変じゃなくなると思う。
 だけれど、現状は結婚しろと言われ、修道院に行くなと言われているから、大変だと言えば大変で……。