稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 私の男性アレルギーが出ない。そして、女性のようにドレスのことが気になる。もしかしたら、男装の麗人で、本当は女性なのかもしれないと思ってつい出てしまった言葉だ。
 顔をあげた目の前の男の人の喉元。シャツの間からのどぼとけが見えた。
 ああ、男の人だ。男性の麗人なわけはないか。
「そんなこと言われたの、はじめてだわ」
 ……だわ?
 え?
 驚いて目をぱちくりすると、男の人の仕草が急に女性らしくなった。
「ねぇ、何で分かったの?私が、体は男だけれど、心は女だって」
 はい?
「こ、心が、女?」
 ナニソレ。男装の麗人じゃなくて……れっきとした男だけれど、心が女?
 確かに、今目の前にいる男性の仕草は女性のそれだし、言葉遣いも女性のそれだ。

 ガサガサと人が近づいてくる音が聞こえたとたんに、男性は、元の男らしい仕草に戻った。
「人に聞かれたくない。あっちにあづまやがあったはずだ。行こう」
 私の手を握っり、男性が歩き出した。
 ひぃっと、身を固めたものの、一向に体に不調は現れない。
 あれ?体は男性だけど、心が女性……、もしかして、私の男性アレルギーって心が関係するのかな?
 そもそも、人によって強弱がある。お父様やお兄様にはあまり反応しないし、子供も大丈夫。
 あづまやに迷路を通って迷わずに到着する。
 あれ?ここってあまり知られてないと思ってたんだけど、そうでもないのかな?
「ところで、君は僕が誰だか知ってる?」
 首を横にふる。
「まぁそうだろうね。あまり人前に出ることはないから。だけど、君もあまり人前に出ていないのでは?」
 こくこくと小さく頷く。
「じゃぁ、私が誰だかってことは詮索しないでくれる?名前は、えっと、エミリオとでも呼んで」
 エミリオは男性名だ。
 目の前で両足をそろえて、ちょんっと可愛らしく手を膝の上に並べている仕草はどう見ても女性。