稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 ふしぎに思って首をかしげる。

「なんて……かわいい……」
 は?
 ほわーっとして、イケメンが恍惚の表情を見せる。
 かわいい?私のこと?
 いや、確かに、イケオジの父に歴史に残るような美女だった母の子だ。二人の遺伝子を持つ私は、お世辞じゃなくてもかわいいけども。
 お兄様もすごく整った顔をしていますけども。
 そんな恍惚とした表情で見られるほどでもないと思うんです。だって、その貴方自身がめちゃくちゃイケメン……美しい顔をしているんだもの。
 明るいオレンジ色の髪の毛は太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
 さらりと前髪を流し、首の後ろで一つに結んでいる髪は、肩の下まで傷みもなく美しい。
 白い透き通るような肌に、澄み切った青い目。
 男の人にしては少し線は細いけれど、大きな唇が魅力的なイケメンだ。
 えっと、まだ、腕つかまれて……ますよね?私……?
 全然、何にも、アレルギーが出ないんですけど……。
 ちらりとつかんでいる男性の腕を見る。
「あ、ああ、ごめん。その、つい見とれちゃって……」
 手が離れる。
 見とれたって……?
「かわいい、ドレスだね」
 ド、ドレス?
 かわいいって、ドレスのことだったのか。私のことだと感違い。うわー恥ずかしい。
「薄いピンクは君の肌に良く似合っているよ。フリルがフワフワしていて、とても女の子らしい。ああ、かわいいなぁ。本当にかわいい」
 すごくしみじみとドレスを褒められています。
 普通、こんなにドレスのことを褒めたりするもの?女性を褒めるんじゃない?私はそんなに褒めるところがない?
 いや、悪気があるようには思えないし……。
「貴方、男性ですか?」
 思わず口にしてしまった。
 目の前のイケメンは心底驚いたように目を大きく見開いて私の顔を見た。
 今まではドレスばかりを見ていた男の人が、はじめて私と目を合わせた。