助けてもらったのに隠すのも……と思ってノートを差し出すと、それを見たかずみんの表情が曇った。



「ど、どうしたの?」


「いや、何でもねえ。ココシガだろ?有名だよな」


「画力とかないから、推しのこと考えたいときは文字を書いちゃうんだよね」



ネットにはファンアートと称した推しの絵がたくさん溢れてるけど、あたしには画力がないから……。


こうして、“一ノ瀬鳴海”って名前を書くだけで幸せになるんだ。



「授業中なんだから集中しろよ」


「はは、だよね」



あたしの謎理論をバカにすることなくかずみんはそう正論を言った。


でもなんで、顔が曇ったんだろう……。


それが気になったけど、単純なあたしはすぐに切り替えて、授業に集中することにした。



「ていうか何度も言うけど、かずみん呼びやめろ」


「ごめん。それだけは無理」