動こうとしないなるくんに痺れを切らして、自ら腕を掴んでしまった。
うわあああ、腕、触ってしまったああ。
不可抗力、不可抗力……。
「なんでそんなにかわいいかなぁ」
「ひぇ!?」
「翠生ちゃんなんか俺のツボ」
腕を掴んでしまったからには進むしかなくて、あたしは顔を真っ赤にしながら急足で歩いた。
む、むりだ。耐えきれない……っ!
駅の人混みを抜けて、商店街に戻ってくるだけでホッとする。
少し歩みを遅くしてから、思った。
暴走しすぎたかな?!
勝手に腕引っ張って歩いちゃって……。
「ご、ごめんなさい!腕、痛かったですか……?」
「…………」
「あの……」
そっぽを向かれて、表情が見えない。
ウソ、怒らせちゃった!?
どうしよう。これ以上なんて言えば……。
穏やかなところしか見てないなるくんが顔も見せてくれなくて黙ってしまうと、こわい。
だめだ、泣きそう。



