にがくて、あまい。






「びっくりした〜」



ケラケラと笑う彼を、じっと見見上げる。


やっぱり、そっくりさんなんかじゃ、ない……。



「な、なるくんですか……?」


「違うけど」


「えっ!?」


「ウソ」


「っ、!?」



イタズラっぽく笑ってるのがサングラス越しでもわかった。


「違うけど」という発言が“ウソ”ということは、つまり……。



ドキドキと心臓がうるさい。


ココシガのライブに足を運んだり、番組の観覧に行ったこともある。


ファンとして、推しの顔をそれなりに近いところから見たことはあった。



だけど、目の前にいるのは訳が違う……。



サングラスを外して、マスクをとる。


それだけのことがスローモーションのように見えて、心臓が口から出てきそうだ。



「どうも。一ノ瀬鳴海です」