「よく飽きないよね」


「推しに飽きるとかいう概念ないからね」


「はいはい。てか次、移動教室だから行こ」


「塩対応〜」


「行くよ」



さっさと教室を出ていこうとする澪の背中を見ながら、慌てて引き出しから教科書とノートを取り出す。


スマホで見ていた動画も一旦止めて……っと。



「もう、先に行ってるよー」


「あっ、待ってってば!」



動画がちょうど推しのソロ歌唱のところだったから、見惚れてしまってた。


澪には何回話しても名前さえ覚えてもらえないけど、あたしの大好きで仕方ないアイドルの名前を紹介させてほしい。