「ど、どういうこと……?」
「それはこっちのセリフだよ。今のお客さん、一ノ瀬鳴海本人か?」
「わかんないよ。似てたけど」
「わかんねーの?ファンなのに?」
「ファンだけど、自分の生活圏に現れると自信ないっていうか、そっくりさんかもって思っちゃって」
普通に考えてあり得ないよ。
違う世界の人だよ。こんな、町で、商店街で、偶然出会える人じゃないもん。
ただならぬオーラは感じたけど、サングラスとマスクでほとんど隠れてたし。
推しが来店するなんて、しぬまでないと思ってるし。
「処理しきれない……」
「とにかくあとは俺がやっとくから、部屋行きなよ」
「ありがとう……」
琉生に甘えることにして、あたしもケーキをひとつ頂いて、澪の待つ自室へと戻った。
夢だったのかな……?
ふわふわとした足取りのまま部屋に戻ると、澪はケーキを食べている最中だった。