姿勢を正して、ふと入り口を見た時、一際背の高い人物が入ってきた。
帽子を深々と被っていて、サングラスをかけ、マスクもつけている。
商店街の人や常連さんは顔を覚えていたりするけど……見たことないお客さんだ。怪しい風貌でほぼわかんないけど。
「……チーズケーキありますか?」
「っ、……はい!」
その声は透き通るように綺麗で、驚いた。
いや、背の高さからして男性なんだろうけど、透明感のある声。絶対歌上手い。
サングラスとマスクのせいで、まったく表情が読み取れないけど、カッコいい雰囲気は漂っている。
緊張して、声が裏返りそうになりながらも、口を開いた。
「タルトもありますが、どちらになさいますか?」
「おいしそう……。どちらも頂いていいですか?」
「わかりました」
チーズケーキとチーズタルトを箱に詰めながら、この人チーズ好きなんだなぁ……と盗み見る。
ケーキが並ぶショーケースを屈んで見ている彼は、サングラスが少しズレていて目が合ってしまった。



