あたしがむくれている間にも、お母さんは澪にケーキを手渡して、さっさと買い出しに行ってしまった。
「翠生、店番がんばって」
「うう、待っててね」
「もちろん。お邪魔します」
にこにこしてる澪、明らかに機嫌がいい。
ケーキ好きだもんなぁ。
ていうかお母さん、なにも今日、店番任せなくてもいいのに。
ツイッターのトレンド見てない?いまだになるくんの名前1番上にあるんだからね。
ぶつくさ思いながら奥の調理場を覗くと、真剣な顔でケーキ作りに勤しむお父さんの姿があった。
これはお父さんに買い出し頼みにくいよな……。
普段は陽気なお父さんだけど、ケーキ作りの時は人が変わったみたいになる。
その手から生まれるケーキがあたしは小さい頃から大好きで、率先して味見係をしていた。
「あれ?翠生ねーちゃん」
「ほんとだ、翠生が店番?」
お母さんの見込み通り、まだお客さんは来ないなと思っていたら、ドアが開いた。



