商店街の真ん中辺りに位置する、木目調の落ち着いた雰囲気のお店。
あたしの家は、ケーキ屋さんだ。
持ち帰るお客さんがほとんどだけど、数席あるイートインスペースで澪と話すことが昔からの習慣になっている。
両親に隠し事はないし、聞かれて困ることもないから。
夕方から夜にかけては、仕事終わりの人がケーキを買いに来るから少し客足が増えるんだよね。
「じゃあ澪、上行こ!」
「あっ、待って!ちょっと買い出し行きたいんだった。店番してくれない?」
「え〜」
高校生になってから時々店番はしてるけど、ケーキを箱に入れるのが緊張しちゃって、苦手だ。
色んな人が来るから、接客自体は楽しいけど。
「ごめんねぇ。澪ちゃんは好きなケーキ持っていって上で待っててね」
「いつもすいません」
「お父さんは奥でケーキ作ってるから、なんかあったら呼ぶのよ?澪ちゃんケーキ何がいい〜?」
「じゃあ、ショートケーキを……」



