帰りの会の終わり。「生徒会補佐は放課後に会議室に行くように。」と先生が告げる。
早速仕事があるの!?と驚きを隠せない私とは逆に隣の女子と話している佐藤くん。
「さようなら!」
坂口くんの号令とともにクラスメイトがいっせいに廊下に出ていく。
「神楽さん、行こっか会議室に、」
「あぁ、うん。……私何すればいいのか全然わかんないからその時はよろしくね。」
「勿論だよ。誘ったのはこっちなんだからね」
ふたりで少し賑やかな廊下を歩く。夕日が佐藤くんの顔を照らし、美しく見えた。触れたら壊れてしまいそうな繊細な目をしていて……。美しいという言葉ですら抑えきれないような感情に陥る。なんなんだろうか……分からない感情だが、不思議と受け入れられる。
「神楽さん?着いたよ会議室。」
頭の中でずっと考えているといつの間にか会議室の前に着いていた。廊下にあるロッカーに荷物を入れ、ふたりで会議室のドア前に立つ。
「失礼します、3年の生徒会補佐です。」
どうぞー、という声が中から聞こえ、2人で入る。中にいたのは優しそうな顔をしたボブ髪の女の子(副会長)と、黒髪のキリッとした目の男の子(生徒会長)、1,2年生の生徒会補佐だ。
「うげっ、3年の補佐駿兄さんかよ。」
「蓮……お前生徒会会長だったのか、。」
佐藤くんと生徒会長は知り合いらしい。生徒会長は3年生にはまだ公表されていないので、生徒会補佐が一番最初に知ることが出来るみたいだ。
「兄さんこそ生徒会補佐になるなんて……」
「仕方ないんだよ。」
ふたりはお互い視線を飛ばしながら会議の準備を始める。さっきの会話からギスギスした空気が会議室内に流れ始める。何となく空気が嫌になったのか副会長が会議を始める。
「改めまして、今回副会長になりました。2年1組加藤遥です。今年1年よろしくお願い致します。抱えげている公約は全て通してあるので、あとは皆さんと協力して実行するのみです。」
加藤さんは結構しっかりした印象を受ける。実際のところそうなのだろう。約2週間ほどで公約を全て通しきるなんてかなりのしっかり者だ。先々週に投票があったため、行動力が尋常ではない。
「2年2組の会長、中野蓮です。公約は委員会の許可が降りてないのでまだ通せてません。が、来週には全て通し、実行に入っていく予定です。よろしくお願いしまーす。」
「では、1年生の方から自己紹介お願いします。クラスと名前、部活を教えていただければ……、。」
副会長は司会の原稿があるにも関わらず、見ずに司会進行をしていく。
「3年3組佐藤駿です。サッカー部でサッカーやってます。よろしくお願いします」
「あ、えっと…。同じく3年3組の神楽莉穂です。文芸部に所属しています。」
そう言ってぺこりと頭を下げると、佐藤くんが良かったよ!と褒めてくれた。何が良かったのだろうと頭の上に疑問符を浮かべていると、声とか聞き取りやすいいい声だったって言ってくれ、照れてしまう。
「早速なんですが、……。」
「ーーー。ーーーー、ーー、。」……
30分くらいして会議が終わる。
「お疲れ様、明日から仕事はじまるからね。明日はゴミ回収だよ。朝7時には集合。」
「うん、いつもそのくらいの時間に徹久と来てるから多分大丈夫。……凄いね佐藤くんは。1年生の時にこんなことやってたんでしょ?尊敬するなぁ、」
「あはははは。そんな凄くないよ、当時の先輩の方が今の僕らより輝いていたもん。まだまださ、!」
「嘘!……あ。そうだ!この後、サッカー行くよね?徹久に文芸部室で待ってるって伝えといてくれないかな?朝伝え忘れてたから多分正面玄関で待っちゃう気がする……。」
登下校を徹久としている私は、いつも部活がない日は正面玄関で待ち合わせをしているのだ。徹久のサッカーが終わるまで図書室で勉強をし、待っている。図書室は本校舎とは別にあるため、正面玄関がうってつけの待ち合わせ場所なのだ。
「ん、いいよ。本当に徹久と仲がいいんだね、神楽さんは。」
「そんなことないですよ、私は徹久に守ってもらっているだけですし、何も出来ないですし。」
実際徹久と私が下校を共にしているのは夜道が女子ひとりだと危ないだろうという徹久の考えからだった。1回ストーカー被害にあったことがある私は徹久と歩くことで被害にあわなくなった。
「そうか、。5時だ、僕はそろそろ部活に行こうと思うが神楽さんも行く頃かな?文芸部も頑張ってね、」
「はい!って言っても文芸部は本読んでるだけですけどね笑」
ははっと笑って手を振る佐藤くん。