ふたりと私たちの距離はおよそ10メートル。少し声が聞きづらいので耳をそばだてる。

「岩戸、誤解なんだ。俺と神崎は付き合ってないよ。マックのときはちょっと相談にのってもらってただけだし、神崎が岩戸に俺のことをあんな風に言ったのも岩戸が俺のことどう思ってるのか聞き出してもらいたかっただけだし、さっきの会話も、その…」

 皆川は緊張しているのか若干挙動不審だ。頑張れ皆川。

「最近私に隠れて捺乃とこそこそしてたじゃない。私に隠し事でもあるんじゃないの?」

「それは、隠し事っていうか、つまり…」

「つまり、どういうこと?」

 由理が訝しげに皆川に尋ねる。

「つまり、岩戸は誤解しているだけで、その…。俺は、俺が好きなのは…俺は岩戸が好きなんだ。俺と、付き合ってほしい」

 皆川の横顔は真剣そのものだった。真っ直ぐに見つめる眼差しの先には由理がいる。由理の顔がふっとほころんだ。

「…うん」

 やった!!
 
 そうか、そういうことだったのね。

「由理はヤキモチ妬いてたってことか」

「僕にはよくわからないですが、一組のカップルが誕生したということですね。よかったですね」

 由理は皆川のことが前から好きだったんだ。私が皆川とマックにいたところを見たり、皆川を褒めるようなことを言ったりしたことに嫉妬してたんだ。皆川が来ると私たちを避けてどこかに行っちゃうのも、今回の勉強会を渋ってたのも、私たちが付き合ってると思ってたから気を遣って…。