日直当番【完結】

「何よ。言いたいことがあるんなら言いなさいよ」

「間違っていたらごめんなさい。神崎さんもしかして…」

 進藤くんは吊革にぶら下がって前屈みになり、私との距離を詰めた。

「妬いてるんですか?」

 !!?

 妬いてるって?私が?進藤くんに?

 みるみる顔が火照っていくのがわかる。私は慌てて弁解しようとする。

「ちがっ。自意識過剰じゃない!?」

「神崎さん、ここは電車の中ですよ。お静かに」

 進藤くんは人差し指を唇に当てて言った。私は慌てて口をつぐむ。

「だから『間違っていたらごめんなさい』と最初に断りを入れたじゃないですか。そんな顔を真っ赤にすることもないのに」

 私は何か言おうとするんだけど、ただ口をパクパクするだけで肝心の言葉が出てこない。

「着きましたね。降りましょう」

 相変わらず進藤くんは飄々としていていけ好かない。私ばっかりムキになってバカみたいだ。

「ついて来ないでよね!」

「帰り道が同じなので仕方ないじゃないですか」

 悲しいことに進藤くんとは電車を降りてからもしばらくは帰り道が同じだ。私は進藤くんと並んで歩きたくないので少し早足で先を歩く。後ろでクスクスと進藤くんの笑う声がする。私は後ろを振り向いた。

「は!?今笑ったでしょ。意味わかんない」

「なんでそんなに必死なのかと思って」

 私は何も言わずに前に向き直り、進藤くんと別れるまで黙って歩いた。