日直当番【完結】

　放課後、自動的に部活の時間が訪れる。

　私はソフトテニス部に所属している。私は中学に入ってからテニスを始めた。中学のときの顧問の先生がめちゃくちゃ怖くて嫌になってやめたくなったこともあったけど、結局テニスが好きだったから今まで続けてきた。特に大きな記録を残すこともないんだけど。せいぜい県大会２回戦がいいところ。

　部室の重たい扉を開ける。ひんやりとした空気が肺の奥に入ってくる。

「おつかれー」

　既に部室には何人か部員が来て着替えているところだった。私もちゃっちゃと着替えて部活に行こうと思ったら、タオルを教室のロッカーに置き忘れたことに気づいた。今日の体育で使ってそのままロッカーに入れていたのだ。

　私は部室からダッシュで教室に向かった。人通りのない廊下に私の走る足音だけが響き渡る。教室の近くまで来るとスピードを緩めて息を整えた。

　教室の後ろのドアから入ろうと引手に手を伸ばしたとき、教室にふたりの人影があることに気づいた。ひとりは進藤くん、その隣に机をくっつけて座っているのは見知らぬ女の子だった。少なくともこのクラスの子じゃない。様子を見るからして、ふたりは勉強しているみたい。

進藤くんの眼鏡がないときに机をくっつけて授業を受けたこと、と進藤くんとコーヒーショップで勉強を教えてもらったことを思い出した。私以外の子に進藤くんが勉強を教えている、というシチュエーションになぜかあまり気分よく思わなかった。しかも彼女は私の席に座って…。

ちらりとその子の横顔見えた。口角がきゅっと上がって優しい目をしたかわいい笑顔。進藤くんの表情はここからでは見えない。

進藤くんも笑ってるの？

　次第の鼓動が早くなる。握った手が汗ばんでくる。なに、緊張してんだ私。

　私はその場に立ち尽くしてしまい、結局タオルを取ることができなかった。