日直当番【完結】

「質疑応答のときに3年男子の先輩が質問してたじゃないですか。くだらない質問をするなあと思いましたけど。神崎さん、寝てたでしょう」

「いや、途中までちゃんと聴いてたよ。なかなか感慨深い話だったじゃないですか」

 進藤くんは「ふーん?」と言ってモップをパタパタと上下に振ってごみを落とした。

「あれ?雨降ってない?」

 窓を開けて空を見上げた。はじめはパラパラと降っていた少量の小さな雨粒が次第に大きくなり、幾線もの白い糸が空から垂れてくるように大きな音を立てて大地に降り注いだ。

 コンクリートの道路は早くも黒く染まってしまった。教室の中に雨が入ってこないように窓を閉めた。

「ひどい雨ですね。今日は傘を持って来ましたか?」

 進藤くんは私の隣に立って窓の外を眺めた。

「一応持って来たよ。こんなに降るとは思わなかったけど」

 ただ窓の外を見つめた。ザーという地面に落ちる雨音に耳を傾けた。その音に反するように教室は無音の空気が漂っている。窓に映る進藤くんの顔を見た。泰然自若の男、か。

 ガラガラ、と教室前のドアが開いて池上先生が現れた。

「おう、日直のふたり、ついでなんだけどここの蛍光灯切れてるから取り換えといてくれる?事務室行けば分かるから」

「「はい」」

 ガラガラ、ピシャン。

 私は一番前の真ん中の座席上にある蛍光灯を見上げた。