私はしゃがみこんで床に落ちたガラスの破片を集め始めた。

「危なっかしい手つきですね。怪我をしたいのですか?」

 進藤くんは言いながらちりとりを私に差し出してきた。

「うるさいなぁ」

 進藤くんは私がちりとりに破片をおいたあと、もう片方の手に持っていたほうきで破片を掃いてちりとりの中に入れた。私は掃き損ねた小さな破片を手でかき集めた。

「神崎さん、危ないので触らないでください」

「いたっ」

 鋭い痛みが私の指を刺した。見ると右手薬指からじわりと赤い筋ができて、静かに私の指を伝っていった。

「言ってる傍から何やってるんですか。見せてください」

 伸びてくる進藤くんの手を私の手が阻止した。

「いいよ。こんなのなめれば治るし」

「それは衛生的によくありません。ちょっと待っていてください」

 今にも指をなめようとしている私に待ったをかけて、進藤くんは後ろの自分のロッカーに向かった。ロッカーから取り出したのは小さい救急箱だった。