私が笑っていると、襖が開いて、お料理が運ばれてきた。
まるで温泉旅館のようにたくさんのお料理が一度に並べられていくのを見て、課長が仲居さんを呼び止めた。
「今日は一品ずつじゃないのか?」
ん?
やっぱり、普段は、一品ずつなのね?
こういうところは、お上品に一品ずつ出てくるイメージだったから、意外だと思ってた。
「奥様から、お二人の邪魔をしないよう、お料理はまとめて運ぶように言いつかっております」
そういうことかぁ……
私たちは、黙ってお料理を並べ終わるのを待つ。
仲居さんが下がるのを待って、課長が口を開いた。
「さ、食べよう。ここの料理はうまいんだ」
そう言って箸を取るので、私は、手をそっと合わせてから、それにならった。
「ふふふっ、実は今日はここのお料理が食べたくて来たんです」
私は、また、つい言わなくてもいいことを呟いてから食べ始める。
すると、課長は箸を止めて言った。
「そうか! じゃあ、君も結婚する気はないんだな? よかった」
何が良かった?
簡単に断ってくれそうなことが嬉しいの?
私だって、元々、結婚する気なんてないくせに、そう言われるとなんだか腹が立つ。
それでも、お料理を一口、口に入れただけで、そんな些細な苛立ちはどこかへ行ってしまった。
「おいしい〜!」
私は、振袖を汚さないように気をつけながらも、ご機嫌でお料理を口に運ぶ。
「課長はいつもこんなおいしいものを食べてるんですか? いいなぁ」
ご機嫌な私は、相手が苦手な課長であっても、おしゃべりが止まらない。
「いや、いつもというわけじゃない。普段は大抵コンビニ弁当だ」
「えっ?」
意外な返事に、私の箸が止まる。
それを見た課長は、苦笑いをこぼす。
「一人暮らしだからな。料理は苦手だし」
ああ、そうか。
1人だとそうなるよね。
私も平日は大抵コンビニ弁当だもん。
そんな話をしながら食事をしていたけれど、半分も食べ終わらないうちに、正座をした足が痺れてきた。
でも、振袖姿で足を崩すわけにもいかず、もぞもぞしていると、課長が「くくくっ」と笑いをこぼす。
何?
課長が笑ってるとこ、初めて見たかも。
「足、崩していいぞ」
「へっ?」
課長が気づくと思ってなかった私は、驚いて変な声をあげてしまった。
「足、痺れたんだろ? 幸い、祖母たちもいないんだから、気にせず、楽にしろ。俺は構わん」
この人、見てないようで、ちゃんと人のこと見てるんだ。
「はい。じゃ、お言葉に甘えて」
私は、足を斜めに崩す。けれど……
「あ、ダメ! 痺れてビリビリする」
もう、両足とも感覚がない。
そんな私を見て、課長はさらに笑う。
「くくくっ、早く気づいてやれなくて悪かったな。菅原もそんなとこで変な遠慮しないで言えばよかったのに」
そうだけど……
「振袖着て、足が痺れましたなんて、かっこ悪いじゃありませんか」
「意外と見栄っ張りなんだな」
課長はそう言いながら、まだ笑っている。
まるで温泉旅館のようにたくさんのお料理が一度に並べられていくのを見て、課長が仲居さんを呼び止めた。
「今日は一品ずつじゃないのか?」
ん?
やっぱり、普段は、一品ずつなのね?
こういうところは、お上品に一品ずつ出てくるイメージだったから、意外だと思ってた。
「奥様から、お二人の邪魔をしないよう、お料理はまとめて運ぶように言いつかっております」
そういうことかぁ……
私たちは、黙ってお料理を並べ終わるのを待つ。
仲居さんが下がるのを待って、課長が口を開いた。
「さ、食べよう。ここの料理はうまいんだ」
そう言って箸を取るので、私は、手をそっと合わせてから、それにならった。
「ふふふっ、実は今日はここのお料理が食べたくて来たんです」
私は、また、つい言わなくてもいいことを呟いてから食べ始める。
すると、課長は箸を止めて言った。
「そうか! じゃあ、君も結婚する気はないんだな? よかった」
何が良かった?
簡単に断ってくれそうなことが嬉しいの?
私だって、元々、結婚する気なんてないくせに、そう言われるとなんだか腹が立つ。
それでも、お料理を一口、口に入れただけで、そんな些細な苛立ちはどこかへ行ってしまった。
「おいしい〜!」
私は、振袖を汚さないように気をつけながらも、ご機嫌でお料理を口に運ぶ。
「課長はいつもこんなおいしいものを食べてるんですか? いいなぁ」
ご機嫌な私は、相手が苦手な課長であっても、おしゃべりが止まらない。
「いや、いつもというわけじゃない。普段は大抵コンビニ弁当だ」
「えっ?」
意外な返事に、私の箸が止まる。
それを見た課長は、苦笑いをこぼす。
「一人暮らしだからな。料理は苦手だし」
ああ、そうか。
1人だとそうなるよね。
私も平日は大抵コンビニ弁当だもん。
そんな話をしながら食事をしていたけれど、半分も食べ終わらないうちに、正座をした足が痺れてきた。
でも、振袖姿で足を崩すわけにもいかず、もぞもぞしていると、課長が「くくくっ」と笑いをこぼす。
何?
課長が笑ってるとこ、初めて見たかも。
「足、崩していいぞ」
「へっ?」
課長が気づくと思ってなかった私は、驚いて変な声をあげてしまった。
「足、痺れたんだろ? 幸い、祖母たちもいないんだから、気にせず、楽にしろ。俺は構わん」
この人、見てないようで、ちゃんと人のこと見てるんだ。
「はい。じゃ、お言葉に甘えて」
私は、足を斜めに崩す。けれど……
「あ、ダメ! 痺れてビリビリする」
もう、両足とも感覚がない。
そんな私を見て、課長はさらに笑う。
「くくくっ、早く気づいてやれなくて悪かったな。菅原もそんなとこで変な遠慮しないで言えばよかったのに」
そうだけど……
「振袖着て、足が痺れましたなんて、かっこ悪いじゃありませんか」
「意外と見栄っ張りなんだな」
課長はそう言いながら、まだ笑っている。



