「明里さーーんっ」



それからどのくらいたっただろうか俺が他のとこを探そうとした時。



「……ぅ」



かすかに聞こえた声。
そして声の聞こえる方へ向かうと、そこには明里さんが岩に引っかかっていた。



俺は彼女を抱き上げ、軽く応急手当てだけすませると、馬で京へ戻る。



「九郎。話しはあとです。至急、愁一郎殿をこちらに来るよう伝えて下さい」



愁一郎殿は程なくしてやってきた。



「ずいぶん、ばっさりやられたみたいだな」



愁一郎殿は、明里さんの傷を見て呟いていた。



「すぐ終わるけど少し我慢するんだよ」



そう言って愁一郎殿は彼女の傷の手当てをしていく。
治療を終えた愁一郎殿と俺は話しをしていた。



「熱出るだろうけど、安静にしてれば大丈夫だよ」
「そうですか……」



彼女が目をさましたのはそれから3日たってからだった。



「ん……ここは?確か私は」
「明里さん。目覚ましたんですね」
「弁慶さ……」



傷が痛むのか、明里さんは顔をしかめる。



「寝てて下さい。傷が痛むでしょう?」
「……」
「明里さんが眠るまでそばにいますから……」



そう言って明里さんの手をぎゅっと握ると、安心したのか再び明里さんは眠りについた。


それからしばらくしたある日。



「ね、明里さん。何があったか聞いていい?」
「あの時、弁慶さんとたちに合流する前、雨が降ってきたのでみんなで雨宿りしてたんです。私は川沿いにいて、後ろから気配がして、振り向くと景時さんの部下が刀を私に向けてきて……。まぁ崖から突き落とされてこんなケガしちゃいましたけど」



彼女は苦笑いしながらそう話す。



「景時の部下、つまりは……」
「はい。九郎さんのお兄さん、頼朝さんに仕えている人です」
「明里さん、景時には気をつけて下さい」
「はい……」



それから明里さんが、起き上がれるようになるまで一週間はかかった。