「……い、……けい!弁慶!!」
「え?あ、九郎」



俺は九郎の声に呼ばれたのに気づいた。



「どうしたんだ?今日はボーっとしすぎだ」
「すみません……」
「明里が気になるか?」
「えぇ……。何だか、嫌な予感が」
「お前の嫌な予感は当たらないだろう?」
「失礼ですよ、九郎」



俺の勘は、当たる時は当たるし当たらない時は当たらないからある意味たちが悪い。



「これが取り越し苦労ですんでくれたらいいんですけどね……」



俺がそう呟くと景時の部隊の伝令がくる。


「伝令ですっ!」



伝令の話しによると、生田の森付近の平家を退けた景時たちはこちらに向かっているが、ただ、明里さんだけは、崖から落ちて行方がわからないと。



そして、景時が俺たちと合流した。


「景時。伝令聞きましたけど、どういうことです?」
「……どういうことって?」
「何故彼女が崖から落ちたのです?」
「……俺も詳しくはわからないけどね」



景時。
狙いはなんですか?
何故、彼女を?



「九郎。すみませんが、先に帰ってて下さい。彼女を探してきますから」



俺は、景時から明里の落ちた場所を聞いて向かう。



「仕方ない」



九郎はやれやれという口調で俺を見送る。



そして。
準備が整い、九郎たちは先に京へと戻る。



そして俺は、明里さんが落ちたという崖付近に向かう。



「ここ、ですか……」



そこには争ったようなあとがあった。
そして俺は、下の川へと降りる。
すると、途中で変な色した場所があった。
それとともに鉄のにおいがしていた。



「この匂いは、血?」



俺は辺りを見回す。
しかし、誰もいる気配はない。それでも、俺はあきらめず、彼女を呼ぶ。