「弁慶さん?どうかしたのですか?」



私が源氏に加わりしばらく経った頃。
弁慶さんがぼーっとしてたから弁慶さんに話しかけた。



「えぇ、実は九郎のことなんですが……」
「お兄さんの頼朝殿を信用しすぎていることですか?」
「それもですが……」
「静さんのことですか?白拍子の」
「そうなんですよ。九郎は人を疑うということを知らなさすぎる」



私はそれを笑いながら聞いていた。
つい先日。
九郎さんは雨乞いの儀式に参加した時に見初めた静さんを妾にしたのだ。



「弁慶さんは面倒見がいいんですよ」
「そんなことありませんよ。面倒見なら、明里さんの方がいいじゃないですか」
「えっ?」
「少し違いますね。確かにあなたは面倒見はいいですが、距離を置いていますよね」




私は弁慶さんに話した。
両親のことを。
そして私がどこから来たのかも話した。


「弁慶さん。私のこと、頭のおかしな奴って思わないで下さいね」
「思いませんよ?……あなたが未来から来た人間でもね」



弁慶さんは今何て言った?
確か……『キミが未来から来た人間でもね』



弁慶さんは確かにそう言った。


「べ、弁慶さん?」
「俺、実は愁一郎殿と知り合いなんですよ。愁一郎殿から聞いていたんですよ」



愁一郎様から!?
でも弁慶さんってよくそんな話を理解できたよね。